当サイトの管理者 shigechuzaemon (シゲチュウざえもん) です。

 当サイトは、自分がこれまでに製作した模型、とくに「ガレージキット」と呼ばれる模型を製作、完成させたものを中心に展示しています。


 以下では、とくに「洋もののガレージキット」と自分のかかわりについて脳裏に思い浮かんだことを少々書いてみます。

 ガレージキット(=GK)という言葉はどうやら和製の英語らしく、もともとは個人が、映画などのキャラクターへの愛着が昂じてその模型を手作りし、それを自宅のガレージをつかって複製し、仲間うちに実費で販売したもの、という意味だったようです。
 いずれ個人単位の小さなメーカーが販売する、ごく少数生産される、マニア向けの模型キットのことを「ガレージキット」と言うようですが、自分の場合、いわゆる「洋もの」、つまり海外製(といってもほとんど米国製ですが。)のガレージキットが好きで、三十年ほど前から、僅かな個数日本国内に入ってくるものを買い求めては細々と製作してきました。
 なかには米国のメーカーにメールで注文したり、EBAYというネット・オークションで落札したりして手に入れたものもあります。

 現在のようにネットが普及する少し以前にこの趣味に染まったため、最初は「製作のしかた」からしてまったくわからず、そしてけっきょく製作技量のレベルはいっこうに進歩せずに来ましたので、完成品と言っても凡庸な作品ばかりですが、模型としてはあまり目にすることのない、珍しいものが多いかとは思います。そうした珍品のたぐいを掲載していることがこのサイト唯一の「とりえ」と言えば言えるかもしれません。

 展示してある完成品模型にはいわゆる「ホラー系」「モンスター系」のものが多く、見る人によってはひょっとして「気味がわるい、怖い、気持ちワルイ」等々の感想を持たれるかもしれません。

 自分自身も、じつはそうした《気持ちのワルイもの》は総じて苦手なのですが、米国産のガレージキットはほとんどがこうしたモンスターを造型したものばかりです。そして自分自身が洋もののガレージキットに魅せられた理由もまた、そうした気味がわるいほどにリアルな人物造型とダイナミックなポーズにありました。

(蛇足ながら、日本のガレージキットといえば「おネエちゃん」、つまりアニメやコミックのヒロインを造型したフィギュアがほとんどです。つまり二次元的な題材を三次元に起こしたものですが、米国のGKの場合、おもにSF映画などもともと三次元的な題材をかたちにするものがほとんどで、その進化の方向もまったく違っていたようです。「洋もののガレージキット」がリアルでダイナミックな造型という方向に進化したのは、ですからいわば当然のなりゆきだったのでしょう。日本のGK世界ではそうしたリアルでダイナミックな人物造型がいまだに市民権を得ていません。)

 というような事情ですので、せっかく当サイトを訪問して下さったのに不快な、怖い思いをされたかたがいらっしゃるならば心よりお詫びいたします。そのことはサイト管理者の本意ではありませんので、なにとぞお許しいただければと思います。
 当サイトには戦車模型やクルマの模型など、いわゆる普及品のプラモデルの完成品も多く掲載しておりますので、せめてそちらをご覧いただければと思います。


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  以下、「洋もののガレージキット」についての説明をもうすこし続けます。

 上で「洋もの、つまり海外製のガレージキットが好きで…」と書きましたが、「洋もの」ガレージキットのいっときの盛り上がりは「ビリケン商会」という日本のメーカー(というか玩具店)の功績が大きかったようで、自分自身もビリケン商会製のソフトビニール・キットに出会ったことでガレージキットの魅力に憑りつかれたようなものです。
 以下は『アメリカン・ガレージキット・ファイル』(1994年 モデル・グラフィックス別冊)という特集本に米国のGK雑誌編集者テリー・ウェッブが寄せた「アメリカのGK世界にようこそ!」と題する「前書き」からの引用です。


 「アメリカのモデラーたちは、1961年にオーロラ社が最初に発売した《フランケンシュタイン》以来、フィギュアキットをつくることに深い愛着を抱いてきた。このプラスチック・モデルのモンスターが莫大な成功をおさめたために、オーロラ社は以後さまざまなフィギュアキットを創造していく。それらは今日ではかなり高値で収集されるほど、人気のあるアイテムになっている。
 70年代の終わりにオーロラ社が倒産するまで、多数のフィギュア・キットが発売され、その題材にはモンスターからコミック・ヒーロー、歴史上の人物、TVや映画のキャラクターまで、あらゆるものが取り上げられた。これらのキットをつくって楽しんだのが、1960~70年代に少年時代をすごした年少の子どもたちである。この時代にオーロラ社が生み出したキットマニアたちが、80年代半ばにフィギュア・キットのリバイバル・ブームの火付け役となったことは、驚くにあたらない。
 模型ブームを呼び戻した要因として、もうひとつ重要なのが、ビリケン商会や海洋堂など日本の会社から、もっと新しくて、より写実的なディテールのガレージキットが発売されたことがある。これらの模型はアメリカで発売されるやいなや成功をおさめた。事実、モデラーの反応が熱狂的だったので、多くのアメリカのメーカーがそのモールドのテクニックを学び、自分たちのガレージキットに細かく手を加えはじめたのだ。かつてほんのひと握りの製作者しかいなかったのがどんどん増え続けて、90年代の初めには百あまりのメーカーが版権の認可、非認可にかかわらず、莫大な数のキットを発売するまでになった。」(3頁)


 オーロラ社のフィギュア・プラモデルの普及という下地に、日本の「ビリケン商会」のリアルなモンスター・フィギュアという衝撃が加わることによってアメリカのGKは立ち上がった、ということのようです。
 私自身も、このころにビリケン商会が発売したモンスターのフィギュアに出会って、その影響を濃厚に受けた「洋もの」キットを愛好するようになった、ということなんだと思います。ビリケン商会がクラシックなモンスターたちのフィギュアを発売したすこし後になって、米国の「ホライゾン社」が、そうしたフィギュアキットの流れを受け継ぎ、さらにそれを精緻にし洗練したような一連のモンスター・フィギュアを発売しました。そのホライゾン社のソフビキットもこのサイトには多く掲載していますが、このメーカーがシゲ・ウチノという日本人(日系人?)が興したメーカーだったという点もあわせて考えると、日本人が洋もののガレージキットの隆盛に果たした役割の大きさには、なにやら感慨深いものを感じてしまいます。
 そして私自身の模型遍歴もまた、そうした「洋もののガレージキット」のいっときの盛り上がりに同期するものだったのだと思います。                                           (終)